オーストラリアの先住民族:アボリジニの歴史と文化

オーストラリアの先住民独であるアボリジニは、5万年以上も前からこの大陸に居住しており、アフリカ以外の地域に住む人類の中では最古の民族である可能性があります。オーストラリアを訪れる予定の方には、ぜひこの歴史と文化にも触れて頂けたらと思います。

そもそもアボリジニとは、「アボリジニまたはトレス海峡諸島の出身者であり、それを自らと居住する地域社会において認識されている人々」とされています。

オーストラリアのアボリジニは、1788年にイギリスがオーストラリアの植民地化を開始した時の民族と関連を持つ人々と、クイーンズランド州沖のトレス海峡諸島に居住する人々の2つのグループに分かれています。

2016年の政府の調査によると、オーストラリアには80万人近くの先住民族が住んでおり、ニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州の東部に最も多くの人々が住んでいることがわかりました。これは、イギリスからの入植者が到着した時にオーストラリアに住んでいたアボリジニの推定人口、75万人〜125万人と比較しても大きな違いはありません。

また、2017年に行われた遺伝学的研究では、現在のアボリジニは、約5万年前にオーストラリアに出現した民族の一員であった共通の祖先と関連性を持っていることが明らかになりました。一説によると、彼らは7万年前頃にアフリカを飛び出し、船でアジアに渡り、その後オーストラリア北部へ移住したと考えられています。

ヨーロッパからの人々が入植した当時は、約700種類のアボリジニの言語と方言が話されていましたが、現在では約250種類にまで減少しています。これらの言語は、Aboriginal Englishとして現在も使用されています。クイーンズランド州で使用されているこれらの言語は、クイーンズランド州立図書館(State Library of Queensland)で見ることもできます。

 

アボリジニ文化遺産

 

オーストラリアの先住民族の長い歴史は、全国各地で発見されている多くの重要な遺跡に反映されています。アボリジニの人々は、土地と深いつながりを持っており、それは彼らの精神的なアイデンティティの拠り所となっています。

クイーンズランド州においては、これまでに43,000以上の遺跡が確認されています。これらの遺跡には、石器物の痕跡、キャンプ場跡、その他の人間の居住の証拠などが含まれています。

重要な文化遺跡には、ノーザンテリトリー(Northern Territory)の「レッド・センター(red center)」の中心部にある巨大な砂岩の一枚岩、ウルル(Uluru)(旧エアーズロック)があります。ウルルはオーストラリアの先住民にとって神聖な場所であり、約5億5000万年前に形成が始まったと考えられています。

その他の重要な遺跡としては、シドニー(Sydney)のボタニー・ベイ(Botany Bay)があり、過去3,000年の間に何度も貝殻の中間層が利用されていた証拠があります。西オーストラリア州のジンミウム(Jinmium)では、6万年前の石器やロックアートが発掘されています。

アボリジニの芸術、文化、精神性は、人生の始まりを語る「夢の時間」と結びついています。これらの物語は代々受け継がれ、土地を育むことの大切さ、その意義、精神的なつながりを教えてくれています。

 

クイーンズランド州で体験できるアボリジニ文化

 

クイーンズランド州(Queensland)では、アート、ダンス、伝統的な宴、その他の文化イベントなど、先住民族の豊かな体験を楽しむことができます。

ゴールドコースト(Gold Coast)のバーレイ・ヘッズ(Burleigh Heads)にあるジェラルガル・アボリジニ文化センター(Jellurgal Aboriginal Culture Centre)では、文化ツアーからダンス・パフォーマンス、トラディショナルな儀式まで、さまざまな体験ができます。近くのビーンリー歴史村(Beenleigh Historical Village)では、アボリジニの家族が描いたイギリス人入植者との出会い、そしてその後の人生を変えるまでの壮大な物語を表現した「赤砂の精霊」を見ることができます。

ブリスベンのクイーンズランド・アート・ギャラリー(Queensland Art Gallery)では、絵画、彫刻、版画など、現代のアボリジニのアートに焦点を当てたオーストラリア先住民族のアート・コレクションを展示しています。ここには、オーストラリア全土から集められた現代のオーストラリア先住民のファイバー・アートの中でも最も価値の高いコレクションが含まれています。

また、クイーンズランド州立図書館(State Library of Queensland)では、アボリジニやトレス海峡島(Torres Strait Island)の人々の重要な記録遺産を展示しており、ワークショップや現代的なストーリーテリングなどの手法を用いて文化的な体験を提供しています。

また、クアンダムーカ・コースト(Quandamooka Coast)からケアンズ(Cairns)、ケープ・ヨーク(Cape York)、トレス海峡(Torres Strait)に至るまで、それぞれのエリアで開催される文化イベントにはそれぞれに異なるストーリーがあります。

2021年6月には、ブリスベン(Brisbane)近郊で開催予定のクアンダムーカ・フェスティバル(Quandamooka Festival)があり、ホエールウォッチング、文化ツアー、美術展、音楽などを楽しむことができます。ケアンズ(Cairns)では、ファッションからパフォーマンス、絵画など、あらゆる形の先住民族の芸術を称えるオーストラリア屈指のアートフェアが開催されます。

海外渡航規制が解除された際には、ぜひオーストラリアでこれらの文化と歴史に触れてみてはいかがでしょうか。